筑波嶺セミナー
つくばね
第18回筑波嶺セミナー
講演者:伊澤 あさひ さん(東京大学 農学生命科学研究科 D1)
タイトル:奄美大島の人里と森林に生息するイエネコの動態と求められる対策
日時:2024年1月22日(月)17:00ー18:00
場所:理科系棟A308教室
外来種による在来種捕食は、生物多様性を損失させる大きな原因の一つである。中でもイエネコ(以下ネコ)は外来捕食者として世界中で大きな問題になっている。ネコは他の外来種と違い、人からの餌付け等によって増加するなど、人がかかわる側面も大きいのが特徴である。そのためネコ対策では、通常の外来種対策で実施される自然環境での駆除だけでなく、人里での対策や人への対策も含めた総合的な対策が必要となり、そのためには、ネコの、人里と自然環境間の動態を把握する必要がある。そこで、本研究では、近年世界自然遺産に登録された奄美大島において、この動態を明らかにした。また、現在進められている対策のデータを基に、対策の影響やネコの行動の季節変化等を明らかにした。
第16回筑波嶺セミナー(森林研究・整備機構との共同企画)
講演者:富山眞吾 氏(北海道大学 大学院工学研究院)
タイトル:鉱山跡地の研究から学ぶこと
日時:2023年10月13日(金)15:00ー16:30
場所:理科系棟C502教室
わが国では過去金、銀、銅などが盛んに採掘され、主要な輸出品目となるなど国家基盤の構築に貢献してきました。それら鉱山のほとんどが閉山された現在、鉱害防止や環境保全の取り組みが行われ、さらには固有の環境に着目した学術研究の場としても活用されています。これらについて事例をあげつつ紹介します。
ポスターはこちら
第15回筑波嶺セミナー
講演者:小坪遊 氏(朝日新聞大阪本社 科学医療部次長)
タイトル:「池の水」抜くのは誰のため?~科学と社会の関わりを考える~
日時:2021年11月11日(木)15:30ー17:00
場所:理科系棟B107教室
第14回筑波嶺セミナー
講演者:杉浦 智親 氏 (酪農学園大学動物医療センター動物生殖学ユニット 助教)
タイトル:乳牛の繁殖性向上に挑む -臨床獣医師の視点から-
日時:2019年9月12日(木) 16:30-17:30
場所:理科系棟A308号室
第11回筑波嶺セミナー
講演者:深澤 圭太 氏 (国立環境研究所)
タイトル:動物の複雑なホームレンジをシンプルに理解する統計モデリング
日時:2019年2月15日(金) 16:00-18:00
場所:筑波大学 第2エリア 総合研究棟A107
要旨:多くの動物はホームレンジをもって行動する。不均質な環境下においてそのパターンがどのように決まるかを明らかにすることは、個体群の空間構造を理解するうえで欠かせない。本研究では、個体が地理障壁の影響を受けながら移動することで様々な形状のホームレンジを形成するプロセスを標識再捕獲データから推定する手法を開発した。この手法では、個体の存在確率の空間分布を考え、その時間変化をホームレンジ中心への移流とランダムな拡散から成る移流拡散方程式で記述している。標識個体がある場所・時点で再確認される確率は個体の存在確率と検出率の積であり、存在確率は移流拡散方程式の数値解を求めることで近似的に得られる。その解は、短い時間では初期位置の影響を受けるが、長い時間では初期位置に依存しない定常的な分布になる。移動障壁などの不均一な環境の効果は、拡散係数を環境依存とすることで明示的に扱うことができる。
このモデルを富山県東部のツキノワグマを対象とした自動撮影カメラによる個体識別調査データに適用し、土地被覆が拡散係数に与える影響と堅果の豊凶がホームレンジ中心への引力に与える影響を検討した。その結果、河川および裸地の存在がツキノワグマにとっての移動障壁となることや、堅果の凶作年においてはホームレンジ中心への引力が低下することが推定値より明らかとなった。標識再捕獲モデルに個体の存在確率の「流れ」を組み込んだアプローチは、複雑で個体ごとに異なる行動プロセスの統一的な理解に向けて有効なツールになると考えられた。
第10回筑波嶺セミナー
タイトル:自由度の高い社会人になろう
演者:北川 徹(筑波大学大学院生命環境科学研究科M1 兼 自営ビジネスコンサルタント 兼 社外取締役(クックパッド株式会社、日本スキー場開発株式会社、KOA株式会社、株式会社カヤック))
日時:2018年11月29日(木)16時~18時
場所:筑波大学 理科系修士棟A308教室
要旨:あなたは社会人になりたいですか?
親への経済的依存から解放され、自分でお金を稼いで自由に使えるのは魅力的ですが、それだけでは学生としての時間や交友の自由さと交換するには微妙ですよね。しかも社会人になるといろいろと責任が増えそうだし。。
でも、もし必要な期間だけ魅力ある会社に所属して、時にはもっと大切なことに時間を使って、また働いて、住みたい環境に住んで、趣味や興味を大切にして、家族や友達との時間を過ごし、それでいて人並み以上にお金を稼ぐことができればどうでしょうか?
本セミナーでは、 就職を目指している人、社会人とは何だろうかと悩んでいる人、楽しい人生を送りたいと思っている人たちに向けて、ビジネスの世界と社会人の実態を紹介します。
第9回筑波嶺セミナー・第60回つくば進化生態学セミナー
タイトル:有性生殖の謎と群集生態学
演者:小林 和也(京都大学フィールド科学教育研究センター森林生態系部門森林情報学分野 講師)
日時:2018年7月20日(金)16時~18時
場所:筑波大学 第2エリア 総合研究棟A205(部屋が違います!)
要旨:生物は厳しい自然環境にさらされることで洗練され効率化が進んだ自己増殖システムである。にもかかわらず、一見なんの差もない環境に多様な生物が共存していたり、一見無駄としか思えない性質を保持していたりする。もし自然選択が最も効率よく増殖するシステムを選抜しているのなら、その場所に最適化したごく少数の生物種だけが存在する生態系になるのではないだろうか?
有性生殖は、無性生殖と比べて多くのコストが必要になるにも関わらず、自然界で普遍的な繁殖システムである。この現象に私が興味を持ったきっかけとなる特殊なアリの生態を紹介し、性の謎に挑戦した研究をご紹介したい。
これらの研究の過程で得られたアイデアが、有性生殖が種内競争を激化させることで多種共存を維持しているというアイデアである。このアイデアについても、シミュレーションと数理モデルを用いて解説する。これらの結果を踏まえて生物多様性の維持メカニズムについて議論したい。
第8回筑波嶺セミナー
タイトル:実験研究者からバイオインフォマティクス研究者へ-王道ではない生き方-
演者:横井 翔(農研機構生物機能利用部門 先進昆虫ゲノム改変ユニット)
日時:2018年6月21日(木)16時~
場所:筑波大学理科系棟B501(これまでと部屋が違います!)
要旨:演者は極めて出来の悪い学生であった。学位取得後バイオインフォマティクスを覚えるため誰も周りで知らないような環境から勉強を開始した。これには他の研究者にはない私独自の経歴も多分に影響している。本公演では恥をしのんで、演者の研究遍歴や研究内容を発表しながら、なぜバイオインフォマティクスを覚えようと思ったのか、そしてどのようにしてバイオインフォマティクスを勉強したのかも発表する。またこれからの昆虫学のデータ解析(特にゲノムデータ)についての展望も述べる。本公演を聞いてくれた方が少しでもバイオインフォマティクスに興味を持ち始めてくれて自分で始めてくれれば幸いである。また研究者を目指さない学生の方にも、とある大人のキャリアの一例として聞いていただければと思う。)
(第8回セミナー、終了しました。参加者は16名でした)
第7回筑波嶺セミナー
タイトル:生態学の研究をしたあと、どうする?
出版業から考える研究のアウトリーチ先
演者:今井 悠(文一総合出版)
日時:2017年1月26日(金)16時~
場所:筑波大学理科系棟A308
要旨:修士課程(河川生態学で河原のゴミムシ研究)修了後に生物系出版社へ就職した経験から、生態学に関係する進路、出版業界の現状と今後の展望(特に自然科学分野)、生物の図鑑や書籍がどういった課程で作られるのかについて紹介する。また、出版などのさまざまなメディアが研究者にとって有益なアウトリーチ先になっているのか?ということについても議論したい。(進路に悩んでいる方、書籍出版に興味のある方、発表の場を探している方など、質問もお待ちしています!)
(第7回セミナー終了しました。参加17名でした。)
第6回筑波嶺セミナー
タイトル:ムスリム・マイノリティの歴史と現在:中国の事例から
演者:海野 典子(中央大学文学部 学振PD)
日時:2017年12月15日(金)16時~
場所:筑波大学理科系棟A308
要旨:日本人の多くはイスラームについて、遠く離れた中東の宗教、他宗教に対して不寛容で暴力的な宗教といったイメージを抱いているかもしれない。しかし、隣国である中華人民共和国には、回族やウイグル族をはじめとして2000万人以上のムスリム(イスラーム教徒)が暮らしており、非ムスリムとの共存のための努力を重ねてきた。本報告では、実は日本とも関係の深い中国のムスリムの歴史と現在を紐解き、独自のイスラーム文化のあり方を紹介する。中国のイスラームに対する理解を深めることによって、ムスリムと非ムスリム、ひいては多元的な価値観を持つ人間同士が共存する方法を考えたい。
(第6回セミナー終了しました。参加15名でした。)
【共催】第59回つくば進化生態学セミナー・第5回筑波嶺セミナー
タイトル:「行動」と「動態」をつなぐ:非線形時系列解析が拓く新しい生態学
演者:川津一隆(龍谷大学)
日時:2017年12月14日(木)16時~
場所:第二エリア 総合研究棟A 107
要旨:野外に出ると,生き物が食う-食われる,助け合うなど様々な行動で相互に影響している様子をみることができる.その多くは印象的で,現代の生態学はこれらの‘観察’できる種間行動が個体群や群集動態を駆動する,と信じて進展してきた.しかしながら,その証拠,つまり自然生態系で種間相互作用論を検証した研究は実は存在しない.その理由は相互作用研究にまつわる三つの呪いによる.まず観測の困難さ:種間相互作用は単一のモノではなく無数の行動の集合である.次に解析の困難さ:相互作用に内在する非線形性が動態を複雑にする.最後に操作の困難さ:種間関係というコトにどう手を加えれば良いのか?
演者らは,この問題の突破口として非線形系列解析の一手法であるEDM(Empirical Dynamic Modeling)に着目した研究を行っている.EDMは観察から得られる時系列データを経験的なモデルとみなすことで,本来のシステムの情報なく要素間の因果関係や相互作用の強さを推定する手法である.本講演では,その中から特に,EDMを1)室内実験系,2)野外群集系に適用した研究を紹介することで,EDMの呪いを解く力とその先の生態学のあり方について議論したい.
第4-2回筑波嶺セミナー
タイトル:多面的に見る水生昆虫の捕食・被食関係に関する研究
演者:大庭 伸也(長崎大学教育学部生物学教室)
日時:2017年11月24日(金)16時~
場所:筑波大学理科系棟A308
要旨:自然界に最も普遍的に存在する生物種間の相互作用は、捕食者と被食者の関係である。これは両者の生存に大きく影響を及ぼす生態学的に重要な関係であると同時に、希少種の保全に必要な環境や、外来種の影響を考察する際にもまず抑えられるべきデータである。本講演では、演者がこれまでに取り組んできた止水性の水生昆虫の食性、捕食行動、天敵としての役割、捕食回避行動、外来種問題などを自身の経緯も踏まえながら手広く紹介したい。
(第4回セミナー終了しました。参加22名でした。)
第1回筑波嶺セミナー
タイトル:農業生態系における広食性捕食者の動態:圃場と周辺環境とのつながりに注目して
演者:馬場 友希((国研)農研機構・農業環境変動研究センター)
日時:8月18日(金)16時~
場所:筑波大学理科系棟A308
要旨:クモ・ゴミムシなどに代表される広食性捕食者は、作物害虫を捕食することにより農作物の被害を減少させるなど、農業生態系において重要な役割を果たす。また、これらの生物は環境の変動に対する感受性が高く、さらに中間捕食者として餌生物や高次の捕食者などさまざまな生き物と関わりをもつため、農地をとりまく環境の変化や生物群集の動態を反映する指標生物としても注目を集めている。この捕食者のもつ機能を活用するために、農地の捕食者の個体数や種構成がどのような要因によって決定されているかに高い関心が寄せられている。捕食者の個体群は、圃場内の環境だけではなく、生息地となる周辺環境からの移入によって維持されているため、その種数や個体数は、農法・圃場管理だけでなく周辺環境を含む広い空間スケールの環境要因からも影響を受けると考えられる。こうした捕食者群集の決定機構については、欧米諸国の畑地を対象とした研究により調べられているが、アジアの代表的な農地である水田生態系においては研究例が乏しい。そこで、本セミナーでは、演者の研究成果に基づき、クモやヒメハナカメムシ類など農業に有用な土着天敵を対象に、圃場内における個体数や種構成が周辺環境からどのような影響を受けているのかを紹介する。また、草地や水路など圃場の周辺環境における捕食者の群集構造や多様性を調べた研究についても紹介する。これらの成果を元に、多様な捕食者相を維持するために必要な環境条件や、それによって得られる恩恵についても議論したい。
(第1回セミナー終了しました。参加者17名でした。)